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*マリクロ|電子書籍総合出版社 作家ブログ*
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映画がヒットして、時代の寵児になりかかっていた頃、机の上で何本もの企画を作ったが、すべてボツになった。
ヒットした映画は、机上からではなく、すべて“シャワーの中”から生まれたのだという。
そのスピルバーグのメガヒット作のひとつ、『ジュラシック・パーク』の原作者マイケル・クライトンは、世界中で累計1億5千万部を売り上げた、いわずと知れた大衆的ベストセラー作家だが、ハーバード大学医学部を首席で卒業した秀才でもある。そんな彼は自伝的エッセイ『トラヴェルズ─旅、心の軌跡』でおもしろいことを書いている。
子供の頃から“幽体離脱”が得意だったマイケルは、小説家になってから霊媒(霊能力者、チャネラー)が変性意識状態(トランス)に入って、日常の意識では手に入らない情報を読み取ることに興味を持ち始めた。
そして、80年代初頭から何人かの霊媒師、チャネラーに会いに行く。その中の一人、ゲーリーを気に入ったマイケルは彼の提案に乗って、自らトランス状態に入りこの世とは別世界、別次元から情報を手に入れる(チャネルする)ことができるようになった。
(以下引用)
「(前略)最初にチャネルしはじめたころは、それが自分にとってこうも容易なのはなぜだろうかと考え、それはものを書くときの状態といささか似ているのではなかろうかという気がした。ものを書きながら長い年月を過ごしていたから、それはわたしにはなじみのある状態だった。
友達で精神科医のジュディスが言った。あなたがチャネルしているのはちっとも意外じゃないわ。だって、ものを書くとき、あなたはチャネルしているに違いないんですもの。でもあなたは、誰もしくは何をチャネルしているの? それを考えたことある? (後略)」
こうした経験、発言をしている作家やアーティストは海外だけでなく日本にもたくさんいる。三島由紀夫は『豊饒の海』の執筆中、いつも誰かが近くにいて、その“彼”に書かされている気がすると語ったという逸話が残っている。
アスリートの世界でも、いわゆる“ゾーン”と呼ばれる状態に入ったとき、普段の実力以上の力を発揮できるという。
これらの体験から見えてくるキーワードは、「集中とリラックス」だ。
スピルバーグはシャワーを浴びることが、マイケル・クライトンは書くことが、ブルース・リーはカンフーが、集中とリラックスを手に入れることができる方法だったのだろう。
書き手が自分のスタイルの身体感覚で書く行為に入ったとき、身体はリラックスしながら、意識は鋭敏に集中していく。
そう、まさにブルース・リーの言う、「考えるな、感じるんだ!」の境地だ。
すると、意識は顕在意識を超えて潜在意識、無意識の領域にアクセスする。個の無意識は、さらに集合無意識にアクセスして、多くの人が無意識に感じている、持っている「何か」の情報を手に入れることができる。それがヒット作になり、時代を超えて残る作品になっていくのだろう。
作家や漫画家が言う、“キャラクターがひとりでに動いてくれる”というのはこういう状態のことで、作者のエゴや思惑とは別のところで登場人物はひとり歩きをし始め、ストーリーが展開していく。
一流の作家とは、“自分”を超えた、人々の集合無意識の翻訳家なのかもしれない。
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