表現者の流儀 #188 石田衣良

石田衣良(いしだいら 1960328日‐)

小説家

 

代表作に、『池袋ウエストゲートパークシリーズ』、『4TEEN』など。

 

 

小説は、上手く誤魔化さないといけないんですよ。

きっちり、ぎゅーって書くところと、本当にポツっとだけ買いて余白を残しておいて、想像してもらう…そのバランスが上手く取れると、作品としては大きな嘘が本当のことになるんですね。

 

その時(余白を残す時)にはね、本当はなるべく具体的な“物(ぶつ)”があるといいんです。

それこそ、例の(未だ見つかっていない卑弥呼が魏の皇帝から与えられたという)金印だったりする…イメージが強いものを置いて、そこの周りに「これは何だろう?」と想像させたうえで、歴史的にはこうだっていうのを、こっちで固めておくんですね。

そうすると大きな嘘で、“ジャカルタに卑弥呼がいた”みたいな話になるわけです。

 

NHK『知恵泉』より)

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表現者の流儀 #187 ロビン・ギブ

ロビン・ギブ(19491222日‐2012520日)

シンガーソングライター

 

兄弟であるバリー・ギブ、モーリス・ギブと「ビージーズ」を結成後、数々のヒット曲を世に送り出す。

 

代表曲に、映画『小さな恋のメロディ』のテーマ曲『メロディ・フェア』(1969年)、映画『サタデー・ナイト・フィーバー』の劇中曲『ステイン・アライブ』(1978年)、『愛はきらめきの中に』(1977年)など。

 

 

僕も(双子の兄の)バリーも、どうしようもないロマンティストなんだ。

僕らの歌詞を読めばわかるだろう?

僕らは他の男なら絶対に書きそうにない歌詞を書く。

自分の感情をストレートに出すんだ。

だからこそ、今も聴かれているんだろう。

 

僕らにとって、いい音楽と悪い音楽の2種類しかない。

僕らの曲は今でもラジオでかかる。

だから、僕らの音楽は僕らの自慢なんだ。

僕らは良いアルバムを作ったという評価だ。

 

僕らは真剣に曲を作り続けてきた。

時代を超えて聴き継がれる曲を作ろうと、いつもがんばってきたんだ。

映画のために書き下ろした曲なんてない。

僕らはいつも、次の世代にも聴き継がれるいいアルバムを作ろうとがんばってきただけだ。

 

BS-TBSSong to Soulより

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表現者の流儀 #186 山口桂

山口桂(やまぐちかつら 1963年‐)

オークションスペシャリスト

 

250年の歴史を誇る、世界最大のオークションハウスであるクリスティーズの東洋美術部門の統括者。

世界中から価値あるものだけを集め、オークションに出品する美術品の目利き。

 

 

果報は、“動いて”待て。

 

何しろ情報が命なんですよ、この仕事は。

高額作品はやっぱり、いろんな意味でコンフィデンシャル(極秘)な部分が非常に多くて。

その中で、やっぱり本当に良いものが動きそうだとかっていう話は、それなりの人しか知らない情報である。

だから、仕事がなくても人に会うわけ。

そこに、いろんなチャンスが…「そういえばさ」みたいな話が意外とあって、そういうものをキャッチしていく。

 

 

たとえば、お茶碗でも、いい箱に入ってると何となくよく見えるけど、じつは“へっぽこ茶碗”だったりするわけですよ。

それはなぜならば、そういうふうな悪いことを考える人がいるわけ。

へっぽこ茶碗に、どっかのいい箱つけてね、売れば、何となくよく見える。

(しかし)どんなに貧しい箱に入っていても、「おぉ、これは!」って、やっぱりわからないといけないじゃないですか。

そこに僕の仕事は尽きるよね、偽物を売るわけにはいかないからね。

 

 

金の問題じゃないと思います、この話は。

すごい大金持ちの個人がいて、「僕が買いますよ」と、だけど買った物は俺の好きにする、みたいな人には僕は絶対に持って行かないもんね、それは売れるとしても。

必ずいいところ(買い手)を見つけるのが仕事。

 

 

僕がやってるアンティーク(古美術品)は、やっぱり100年、1000年と人の手から手へ渡ってるわけでしょ。

その中の、ほんと一時期、ほんの1回、ちょっとパッと橋渡しをするだけなんですけど、それをちゃんとしたところに納めるっていう使命感みたいなのもあるし。

後世に残す…なんていうか、一助をするということですよ。

 

 

日本美術品だから日本人がわかるなんていうのはね、妄想でしか過ぎない。

いや、俺が日本人だっていうんだったら、もっとやっぱり勉強しなきゃダメだなって思いましたよね。

それぐらい日本のことを学んだり、やってる人は外国にいるってことですよ。

 

 

(プロフェッショナルとは)ビジネスの最大の、なんて言うかな、いいチャンスっていうのは、人づきあいとか、ご縁とかっていうとこからね、それを大事にすることによって、やっぱりいい仕事ができると思うんで、うん。

人を大事にすることができて、そこからいいビジネスを作れる人のことですかね。

 

NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』より)

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表現者の流儀 #185 トム・ダウド

トム・ダウド(19251020日‐20021027日)

アメリカの音楽プロデューサー、エンジニア

 

コロンビア大学の物理学研究室に勤務していた第二次世界大戦中、工兵として原子核工学を研究。

退役後は物理学の知識を生かした音作りで、アトランティック・レコードの黄金期を築いた。

 

プロデュースを手掛けたアーティストは、アレサ・フランクリン、ウィルソン・ピケット、エリック・クラプトン、オールマン・ブラザーズ・バンド、デレク・アンド・ザ・ドミノス、シカゴ、プライマル・スクリーム、リタ・クーリッジ、レイ・チャールズ、レーナード・スキナード、ロッド・スチュワートなど多数。

 

 

トム・ダウドの元でエンジニアを務めていた、ハワード・アルバートとロン・アルバート兄弟の回想。

 

 

トムは大変なインテリで、とにかくいろいろなことに造詣が深かった。

何より、人の意見を引き出すのが上手かったんだ。

自分の意見を相手に、まるで相手自身の意見のように思わせるのが上手かったとも言える。

僕らはトムからヒット・レコードの作り方を習った。

 

 

アーティストの中には、アイデアを練り上げるのに時間がかかる人もいるからね。

トムは絶対に相手を急かさなかった。

待っても満足するものが録れなかった場合には、翌日また録り直せばいいという態度だった。

最後に完成した最高のものしか部外者には聴かせなかった。

僕らは、「録音テープなんか安いもの」という哲学で録音していたんだ。

だから、スタジオの連中に「これからテイク1を録る」なんて、一度も言わなかったんだ。

テープレコーダーは、つねに録音状態になっていた。

スタジオのアーティストには、録音中であることを気づかせずに録音するよう心がけていた。

スタジオでジャムセッションが行なわれている時は、いつも録音していた。

これは、あらゆるアーティストのアルバム制作において、とても役に立った。

デレク・アンド・ザ・ドミノスの時は、特にそうだった。

 

BS-TBSSong to Soulより

 

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表現者の流儀 #184 甲斐信枝

甲斐信枝(かいのぶえ 1930年‐)

絵本作家

 

雑草や草花を描き続けて60年以上。

代表作に、『雑草のくらし あき地の五年間』、『ちょうちょはやくこないかな』、『つくし』、『たけ もうそうだけのおやこ』など。

 

 

私、人生観変わったの、(雑草を)観察してるうちに。

草がね、教えてくれたのはね、安住せよって。

あのぉ…長い長い…自分たちは、生きてきた歴史の中から安心を知ってるんだって。

細かなことでね、ガタガタガタ思うなって。

安住せよって、ちゃんと時間が解決するって。

それはもう、大変な財産でしたよ。

 

 

この次の時はね、上手く描いてやろう、というのがダメなの。

そういうこと思うからダメなの。

相手に近づこうとしないと。

こういう連中(雑草)は、どこまで行っても「おいで、おいで」するから、永久に追いかける感じです。

 

NHKスペシャル『足元の小宇宙供ヽ本作家と見つける“雑草”生命のドラマ』)

 

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表現者の流儀 #183 田中角栄

田中角栄(たなかかくえい 191854日‐19931216日)

政治家

 

6465代内閣総理大臣。

小学校卒業という学歴ながら首相にまで上り詰めたことから「今太閤」、膨大な情報と知識を明晰な頭脳で分析し、徹底してやりぬく実行力を持っていたことから「コンピュータ付きブルドーザー」、ロッキード事件で逮捕後も政界への隠然たる力を持ち続けたことから「闇将軍」など多くの異名でも呼ばれた。

 

1974(昭和49)年、金脈問題の追及を受けて首相退陣を表明した頃、東京・目白の私邸で親しい記者に語った一言。

 

 

雨の音はいいな…人生を考える。

 

(『田中角栄100の言葉』宝島社より)

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表現者の流儀 #182 フランク・ロイド・ライト

フランク・ロイド・ライト(186768日‐195949日)

アメリカの建築家

 

近代建築の三大巨匠の1人。

代表作に、帝国ホテル・ライト館(1923年:東京)、カウフマン邸/落水荘(1936年:ピッツバーグ)、グッゲンハイム美術館(1959年:ニューヨーク)など多数。

 

 

神を「God」と書くように、私は自然を「Nature」と大文字から書く。

 

(『私の履歴書/ジョー・プライス』日本経済新聞より)

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表現者の流儀 #181 押井守

押井守(おしいまもる 195188日‐)

アニメーション監督、映画監督、ゲームクリエーター、演出家、小説家

 

代表作に、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』、『イノセンス』、『機動警察パトレイバー the movie』、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』など。

 

 

アニメーションを、いかにしたら映画になるかっていうさ、当時は切実なテーマだったんですよ。

豪華なテレビアニメとね、映画としてのアニメーションってどこが違うんだろうってさ、これがわかんない限り、監督になれないと思った。

で、『エース』(『劇場版 エースをねらえ!』1979年公開、監督・出崎統)って作品を観た時に、まぁ、驚いたわけだよね。

格調っていうか、まぁ、映画としての“格”を感じたんですね。

繰り返し観るしかないから…繰り返し観て…何回観たか覚えてないけど。

ひとつわかったのは、流れてる時間が違うんだってことなんだね。

んー、これはね、ちょっとした発見だった。

印象に残ったのは、主人公の“丘ひろみ”っていうね…主人公が試合をするんですよ。

その時に頭上をヘリコプターが通過してくっていう、有名なシーンだね、あれね。

その瞬間に感じる“何か”なんですよ。

異なる時間と空間をね、自在に生み出すことで、その作品に固有の時間が流れ始めるっていうかね。

それがね、とてつもない快感を生み出すっていうかさ。

『ビューティフル・ドリーマー』(1984年公開の映画『うる星やつら2』)っていうのは、それだけを目指して作った。

 

NHK-BS『クリエーターたちのDNA ニッポンアニメ100年史』より)

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表現者の流儀 #180 アレン・ギンズバーグ

アレン・ギンズバーグ(192663日‐199745日)

アメリカの詩人

 

ジャック・ケルアック、ウィリアム・バロウズらとともにビート・ジェネレーションの中心人物としてヒッピーなどから熱狂的な支持を受けた。

ポエトリー・リーディングでも知られる。

 

 

チベットの僧のことわざにある、

“自分を超える弟子がいない者は師ではない”

 

私は彼(ボブ・ディラン)の言葉に圧倒された。

特に(『はげしい雨が降る』の中の)、「歌う前に自分の歌の意味を知る」、「山にこだまさせ、みなに伝えたい」といった言葉。

聖書の預言のようだ。

詩とは力ある言葉、人の髪も逆立たせる。

主観的真実の表現であるが、他の人が客観性を与えた時に、それは初めて詩と呼ばれる。

 

(映画『ノー・ディレクション・ホーム ボブ・ディラン』より)

 

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表現者の流儀 #179 船村徹

船村徹(ふなむらとおる 1932612日‐2017216日)

作曲家

 

戦後の日本歌謡界を代表する作曲家のひとりとして、生涯で5000曲以上を作曲。

代表作に、『王将』(村田英雄)、『兄弟船』(鳥羽一郎)、『矢切の渡し』(ちあきなおみ、細川たかし)、『みだれ髪』(美空ひばり)など多数。

 

 

芸術関係っていうのはね、やっぱり先輩のものをね、見よう見まね。

それと、それをずっとやっていく。

その中で“自分”を、何か作ろうとするのが…当然そういう道なんですね。

だけど、古賀(政男)先生という人は非常にいいものをたくさん作られているけども、私は生意気だったから、「時代が違うんだ」と。

そういう気持ちでいないとね、やれない仕事なんですね、ええ。

 

NHK-BS『たけしのこれがホントのニッポン芸能史』より)

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